セミナー情報

コンテンツ重視の時代に欠かせないWEBメディアのブランディング論【セミナーレポート 前編】

セミナー概要:

デジタルと非デジタル、それぞれの視点を交えながら「今求められているメディアとは何か」を紐解くセミナーを開催。BRUTUSやVOGUE、GQなど数々の媒体で編集長を歴任し2016年にクオリティーメディア「Byron」をウェブ創刊された齋藤和弘様とネットメディア運営に精通するINCLUSIVE株式会社 代表取締役の藤田誠様に講演頂きました。

開催日:2017年2月21日 @中目黒(株式会社オムニバス本社)

講演内容:

「コンテンツ重視の時代に考えるこれからのWEBメディア論」(講師:齋藤和弘氏・藤田誠氏)
「動画コンテンツを流通させるためのマーケットプレイスVISM」(株式会社オムニバス)
パネルディスカッション

 

前編:「PV、UU、バズを無視したByron流WEBメディアブランド論」

 

藤田 誠氏:INCLUSIVEという会社をやっておりまして、「メディアエンパワーメントパートナーズ」=メディアの持続可能な運営を支援することをメインに、メディアの運営・収益化の支援、広告事業、アドテク関連のソリューション提供、メディアブランディング事業等を行っています。2007年に会社を設立し、これまで手掛けたメディアは約50以上ございます。

ギズモードなどのメディアが「それブログですか?」と質問されるような時代に、「これからはこういうものがメディアとして信頼性が高くなるんですよ」という営業も経験してきました。

他にもメディアの構築と運用という形で、ゼロからメディアを作ることにも挑戦させて頂いております。雑誌媒体様やテレビ局様などと協力させて頂きながら、メディアの開発、そこで必要な編集者の育成まで行っております。

このような形でメディアビジネスを展開させていただき、非常にたくさんのメディア、特にPVを追いかけることについて努力している会社です。ただ、昨今これだけメディアの数が増えてきている中で、果たしてそれだけでよいのか、という課題感のもと立ち上げさせて頂いたのが、Byronでございます。ではここから斎藤和弘様にバトンタッチさせて頂きます。

 

■ほとんどの人がSNSをやってないことに気づこう

齋藤 和弘氏: Byronというウェブメディアを作りました斎藤です。Byron立ち上げの背景について、先ほどの藤田さんのお話もありましたが少し補足させて頂きます。

たぶん皆様もそうだと思うのですが、世の中の人がみんなFacebookやインスタをやっていると思っていませんか?特にこの業界はそう思っている人が多いと思います。みんなやっているし、みんなそこで発信していると思っている。ところがほとんどの人は実際にはやっていません。そこにまず気づきましょうというところからこの話は始まります。

 

もう少し言うと、デジタルやWEBは極めて民主的で数がすべてという世界です。そうすると何が起こるのかというと、つまらないコンテンツが蔓延する。当たり前の話なんです。これが嫌で嫌で。私もFacebookはずいぶん前からアカウントは持っていますが、投稿・発信は年に1度くらい。自分の誕生へのお祝いにお礼を返す投稿をするくらいです。でもたぶん、そういう使い方の人がたくさんいらっしゃる筈なんです。

なんでそうなったのかというと、やっぱり本当に読むべきものというか見るべきものがありません。最近Facebookはほとんど動画になって来ていますがそれでも同じで、「こんなものをみんなは見続けているんだ」と思うと「世の中は今後どうなるんだろう」という風に思った次第です。

そういう話を藤田さんにしたら、引っ掛かったらしくて、「何かやりましょう」という話になりました。ではいざやるという時に、私が藤田さんに出した条件は

・独断と偏見でやります

・数は求めません

・マネタイズは私はしません

というものです。普通こんな条件を出されたらWEBの人は「じゃあ辞めます」となるんですが、なぜか藤田さんは奇特な人で「やりたいです」と仰っていただきました。ですのでByronというメディアでは基本的に数を求めていません。数を求めずにどうやって成立するのかというと「数を求めないところ」の広告をとればいいじゃないか、という話です。

 

■マスを無視してもWEBメディアのブランドは成立する

実際にどうしているかというと、Byronで書いている人はみんな私の昔の知り合いです。1990年代頃の「BRUTUS」で書いていた人たちなどを大量にアサインしています。その時代の人たちが何をしてきたかというと、自分の作るコンテンツというものにある種、命をかけていました。命がけで好きなことをして、文章を書いていたんです。

そういう人だけを集めて、その人たちがやりたいことをやりましょうと企画しました。ただしここでも1つだけ条件があって、「コンテンツのレベルを普通の人にわかるように絶対に下げないでください」。つまり「みんなが分かるというコンテンツにはしないで欲しい」とお願いをしました。みんなが分かるような民主的なコンテンツの制作をやった瞬間に、おそらくByronは他のメディアと変わらなくなってしまうと思ったからです。

ブランディングにとって重要なのは自分たちがどうやって「唯一無二」であるかを証明するしかないのです。そのために他と違うことを延々とやる。他と違うということは数はとれません。しかし数は取れなくても、他と違うということでそれはブランドになるのです。

世の中にはたくさんのブランドがありますが、いわゆるマスプロダクトを扱うブランドがある一方で、そうではないブランドもたくさんあります。私はファッションというものに10何年も関わってきたので、いわゆる「ラグジュアリー」「ハイエンド」なブランドに良く知っています。

ハイエンドブランドというのは最初から、世の中全員の人などは相手にしていません。対象にしている顧客は全人口のおそらく1%くらいです。だからその1%だけにどう刺さるかだけを考えれば良いんです。マスを相手にしなくとも成立する世界。それってWEB上でも可能なのではないか?というのが私の出した仮説でした。

この場合のブランディングで一番大事なことは、自分たちが他のどこよりも優れているということを自分たち自身で発信し続けないといけないということです。ビジネス的なベンチマークとしては「単価が一番高いもの」がブランドだと言えます。メディアの場合、広告の単位当たりの価格が一番高いものです。

そうやって考えると、WEBメディアの場合、PVやUUというのは多ければ多いほど、単価が下がっていきます。だからPVやUUというのは、トータルで貰える金額さえしっかりしていれば少なくていいんです。

 

話をByronに戻します。この「マスを相手にしなくても単価の高さでWEBメディアのブランドは成立する」という考えの元に創刊したByronは、おかげ様で広告も入るようになりました。

このByronに書いてあるネタというのは、私も本当に読みたいという内容です。何割かはつまんないと思うものもあるものの、「何を書いてもいい」といった中でこれだけの内容が揃っているのは私自身もすごいと思っています。

一般的には何の役にも立たないし、全員の共感なんか得ませんが、ある部分の人には極めて刺さる。そういうものを作ることで、WEBでもメディアの(ハイエンドの)ブランディングは可能ではないかと思っています。

–後編はコチラ

■—ゲスト紹介—■

斎藤 和弘 (さいとう かずひろ)

編集者/明治大学特任教授。平凡社「太陽」編集部を経て1996年からマガジンハウス「BRUTUS」編集長、2001年にコンデナスト・パブリケーションズ・ジャパンの代表取締役社長に就任、「VOGUE」の編集長も兼務。2009年末に退社し、フリー編集者・メディア開発コンサルタントとして活躍中。2016年より「Byron」創刊編集長。ファッションブランド論の第一人者。明治大学特任教授も兼務。

藤田 誠(ふじた まこと)

INCLUSIVE株式会社代表取締役。広告代理店、ゲーム会社、ウェブメディア、ポータルサイトでの勤務を経て、2007年、メディア収益化に特化したブティック型エージェンシー、INCLUSIVE(旧targeting)設立。小学館、集英社、三栄書房、扶桑社、CCCメディアハウス、マガジンハウス、TBSテレビ、CBCテレビなどの雑誌媒体のデジタル化、新規ウェブ媒体の事業立案・運営・収益化を多数行う。ウェブメディア界の仕事人。

本件に関するお問い合わせ:
株式会社オムニバス  セミナー担当  藤本
TEL: 03-5725-8317  MAIL: info@e-omnibus.co.jp

ビューアビリティやアドフラウドなど、インターネット広告の問題を解説 【セミナーレポート】

【セミナー概要】
本セミナーでは、Twitter、Facebookなど数々の大手プラットフォームで広告計測の認定ベンダーにも採用されているMOAT APAC and Japan Director のシャオ様をお招きし、広告のビューアビリティ計測や取引の透明性について世界ではどのような議論がなされているのか、実例と共にご講演頂くセミナーを開催致しました。

※ExchangeWire Japan様に当セミナーの内容が掲載されました。
(2017/5/26)「ビューアビリティ・広告取引透明性のグローバル潮流を語る」-オムニバスイベントレポート-第1回; http://www.exchangewire.jp/2017/05/26/news-moat-report-1/
(2017/5/30) 「ビューアビリティ・広告取引透明性のグローバル潮流を語る」-オムニバスイベントレポート-第2回; http://www.exchangewire.jp/2017/05/30/news-moat-report-2/

 0.業界への問題提議〜透明性のある広告取引を〜

 

MOATとは、“ To make brand advertising more effective online”をビジョンとする3rdパーティ計測ツールベンダーです。測定対象としては、主に広告のビューアビリティやヒューマントラフィック、アドフラウド等をメインに行っています。米国ではプレミアムパブリッシャーに対して9割のシェアを持っており、また多くのブランド広告主にも用いられています。

今回は、MOAT社の事業ドメインとも非常に密な関連性のあるテーマで、世界的なブランドチーフマーケティングオフィサーが行ったひとつのスピーチをご紹介致します。

Marc Pritchard, P&G, on Better Advertising Enabled by Media Transparency at IAB ALM (full video)

今回は計測ツールベンダーとして、このスピーチの中から要点として挙げた3点に沿ってお話したいと思います。

Only Buy Human and Viewable inventory

Adopt the MRC Viewability Standard

Platforms Must Support Third Party Measurement

 

1. Only Buy Human and Viewable inventory(ビューアブルであり、かつ人が見ているトラフィックのみを買う)

インターネット広告はビューアビリティが保証されているわけではありません。インターネットというメディア自体がブラウザやアプリによってアクセスされていて、スクロールされることも多い中で、広告枠は上に張り付けられていることもあれば下に埋もれているままのこともあります。

ビューアビリティは媒体側がサイトのレイアウトや構成、記事コンテンツと広告のバランスなどの面でコントロールできる部分であり、正しく計測を行うことで改善や新規メニュー開発に繋げることも出来ます。

一方、Human(人間)によるトラフィックか否かについて。人では無いトラフィックを指して NHT(non-human-traffic)、アメリカでは主に IVT(Invalid Traffic)と呼ばれています。意味合いとしては「効果の無いトラフィック」ということになります。

 

その「効果の無いトラフィック」の中身を見てみますと、さらに2種類のトラフィックに分けられます。General と Sophisticatedです。ジェネラル(一般的な)とは「悪意のない無効なトラフィック」を指しており、インターネットの世界で必ず存在するようなもの、データセンターからの通信やサーチエンジンによるクロールなどです。こういったものは多くの場合、自分はロボットですよというような表示を媒体側に渡していて、媒体側もこれは人間ではない、というのが分かるようになっています。

そして Sophisticated(ませた、詭弁)なIVT とは、悪意のあるトラフィック。ハイジャックされたデバイス、マルウェア、クッキースタッフィングなど色々なカテゴリがあります。主にはトラフィック稼ぎ、それによる広告収益稼ぎを狙うようなものです。

どちらも人間のトラフィックではないので、欧米の広告主ー代理店ー媒体の中では基本的に報酬は発生しないという合意は取れています。APACではこれから測定して割合などを調査するので、これからこういう論議が始まると思います。

 

このIVTの計測に関しては、ベンダーの認定は基本的にMRCという組織が行っているのですが、去年まではジェネラルな方のみに対応していれば認定が下りていたところが、今年以降はもう一方の悪意のあるトラフィックの方についても対応しないといけなくなってきています。

 

ではそのIVTが、現状どの程度発生しているのか、2016年Q3の日本でのデータを出してみました。デスクトップおよびモバイルWEBのバナー、それぞれ約2.5%と2.2%。デスクトップの動画、モバイルWEBの動画については1.9%、2.0%になっています。

また中身を見てみるとほとんどがジェネラルのIVTが占めており、今のところ大問題にはなっておりません。つい最近ある日本の新聞紙で結構な金額の広告費が不正でとられているのではないかという記事がありましたが、それも今後JIAAがいくつかの3rdパーティベンダーを用いた調査を行うとのことです。

IVTについては、個人的に「花粉症」と同じようなものだと思っています。「いつ来るかわからない」部分があり、1つ悪いベンダーが誕生すると数値も大きく変動する可能性がありますので、そちらは常にトラッキングしておく必要はあると思います。

 

2. Adopt the MRC Viewability Standard (ビューアビリティについてMRCの基準に準拠する)

世の中的に色々な基準が媒体事や代理店事に混在していたので、統一的な基準を1つ設けないとビジネスに支障をきたすという話ですね。ビューアビリティの基準を定めたのは5つの団体でして、iab, ANA, 4A, MRC, dcm です。MRCがいちばんメインになるメディアレーティングのグループでして、業界の中で80~90年の歴史があり、古くはラジオや新聞紙のレーティングを行ってきた非営利の組織です。

MRCの定義によればビューアビリティとは以下のようなものです。

 

 ・ディスプレイ広告に関しては、 50%以上表示かつ1秒以上表示

 ・動画に関しては 50%以上表示かつ2秒以上表示。

 ・モバイルの基準はデスクトップに準拠

 

これが他の、例えばあるグローバルエージェンシーでは、ディスプレイは100%をオンスクリーン(ただし表示時間の規定なし)、動画広告は100%オンスクリーンを動画尺の50%の長さかつ音声ONで、という基準が採択されています。

動画に関する基準がとても厳しいのが分かります。一方でディスプレイに関する基準は「100%オンスクリーン」と厳しいように見えつつ、ユーザーが(特にモバイル環境で)スクロールする速度を考えると時間規定がない状態で正しく「広告が見えた」と言えるかどうかは怪しいです。

このようにたくさんの基準が混在しているので、一番ベーシックになる基準、ここではMRCの基準を採用し、統一することでビジネスを分かりやすくすることが大きなメリットです。

 

3. Platforms Must Support Third Party Measurement (プラットフォームは3rdパーティ計測ツールをサポートするべきだ)

これは、冒頭紹介したスピーチの中では「狐に鶏小屋を守らせるな」と表現されています。ビジネス上の取引を行うために、第三者による公平な目が欠かせないという意図だと思われます。実際、2016年に発表されたFacebookの動画広告評価指標の誤りなど、媒体者自身が自分たちの広告価値を決定してしまっている「囲まれた庭」状態の問題点を示す事実が複数出て来ました。

MOATは3rdパーティ計測ベンダーとして現状で唯一、twitterでの動画広告、Facebookとinstagramの動画広告、YoutubeやSnapchatやPinterest などを測定できる立場にあります。

 

4.ビューアビリティの先〜ブランドセーフティに関する議論〜

つい先日のニュースですが、イギリスでハバスグループがYouTubeへの広告出稿を差し止めたという報道がありました。これが示唆していることとしては、HumanとViewability が保証されたとしても、次の一歩として「ブランドセーフティ」の問題があるということです。ブランド広告がどのような記事やコンテンツに配信されるか。例えばテキストコンテンツであればキーワードベース、動画広告であれば音声認知や画像認知を用いた技術でしっかりとコンテンツの中身の精査をしていくことが重要になってくると思います。

ブランドセーフティを守るための手法(のタイプ)として「Pre Bid  Post Bid」があります。

Pre-Bidとはつまり、viewabilityの低いimp等に対してそもそもプログラマティックでbid(入札)しないというアプローチ。一方Post Bid とは、取引形態として手売りの枠やPMPなどのプレミアムな広告枠についての事後的なアプローチ(広告商材に反する内容のニュースが発生した際に公共広告への差し替えなど)のことを指します。

 


(左: MOAT.inc シャオミン シャオ様 右:株式会社オムニバス 山本)