テクノロジーで”買い物”はどう変わる?〜リテール革命時代の顧客体験創造〜 前編


セミナー概要:

近年リテールテクノロジーの進化や決済環境の変化によって私たちの購買体験は大きく様変わりしようとしています。株式会社オムニバスでは、リテール革命時代における新しい顧客体験創造に関するセミナーを開催いたしました。

開催日:2017年9月8日 @渋谷

セミナー内容:「リテール×テクノロジーによる顧客体験の変化 〜流通・小売企業は今、何に取り組むべきか?〜」

登壇者:

オイシックスドット大地株式会社 執行役員 COCO 奥谷 孝司 様
大日本印刷株式会社 クリエイティブビジネス開発部部長 矢野 孝 様
株式会社クレディセゾン ネット事業部部長 磯部 泰之 様
株式会社オムニバス 代表取締役 山本 章悟(モデレーター)

 

グローバル規模で起こる小売業界の低迷

山本:まずは今回のセミナーを開催するキッカケにもなった大きなニュースについてお話できればと思います。2017年6月11日に、アマゾンがホールフーズマーケットを買収することを発表しました。その背景としてなにが起こっていたかというと、アメリカで小売業界が瀕死の状態になっているということがあります。BeBeとかTHE LIMITEDなどに至っては店舗は全店舗が閉店され、オンラインでは売り上げが伸びているのでそこだけ残したという状態になっています。その他にもpaylessという会社は破産、トイザラスもつい最近破産するのではないかというニュースがありました*¹。

結構これは深刻な状態だということが海の向こうでは起こっている。そしてそんな中、アマゾンとウォールマートの株式時価総額が逆転したんですね。具体的には2015年に逆転したんですけれども、アマゾンの方がUSのリテールの巨人であるウォルマートよりも価値が高いと株式市場ではみなされていると。実際、ウォーレン・バフェットさんという有名な投資家が、ウォルマートの株を全部売却したというのもニュースになりました。

 

すると今度は8月23日にGoogleがウォルマートとの提携を発表しました*²。記事によるとGoogleがやっている音声の認識サービス、アマゾンでいうところのアレクサ、アマゾンエコー、あれをウォルマートとやるというふうに発表していて、まずは音声のところの提携なんですけども、今後どんなことをしてくるのかということは非常に面白いところに来たなと、いうことになっています。ここで、ビジネスの面でもアカデミックな面でも、日本におけるアマゾン研究の代表者として奥谷さんをお招きさせていただきました。

 

参照*¹:http://www.huffingtonpost.jp/2017/09/06/toys-r-us_a_23199623/ 

参照*²:http://blog.walmart.com/innovation/20170823/walmart-google-partner-to-make-shopping-even-easier-heres-how

オムニチャネル戦国時代のアメリカ

奥谷:今まさにアメリカはオムニチャネル戦争になっているなというのを感じています。アマゾンのことを語るといろんな側面があるのであれですけれども、やっぱりデジタルで顧客のことをわかっている人たちがオフラインに攻めてきていると。一方でこのニュースがあったのと同じタイミングに、日本では記事になっていないですけど、実はウォルマートがボノボスという会社を買収しているんですよ。
(参照:https://www.nikkei.com/article/DGXLASGN17H02_X10C17A6000000/

ボノボスという会社はネット企業で、ネットでお客さんとつながっていて、店舗は基本的にショールーム化していってお客さんの洋服はパーソナルスタイリストがフォローしながら試着をして、買うのはネット。昔だったらウォルマートがそういう会社買ったことが大きなニュースになったのが、今やアマゾンの方が先に来ている(インパクトは大きくなっている)。ネット企業というのはオムニチャネル戦略競争の主導権を握ってきていまして、それでかなり慌てているのでGoogleさんとの提携やアレクサの対応というのがでてきている。オフラインの雄も負けじとパンチが出せるわけですから素晴らしいなと。逆に日本の小売業はようやくアプリを作って専門店が少しオムニチャネルを始めたかなというぐらいなので、遅れているのかなというのは感じるところですね。

購買接点とエンゲージメントのマトリックス

 

オイシックスドット大地株式会社執行役員
統合マーケティング部 奥谷孝司

オンラインとオフラインの戦争をエンゲージメントコマースマトリックスっていうものを書いて説明することがあります。

今はお客様への「購買接点」としてオンラインとオフラインがあって、「エンゲージメント(お客様とのつながり)」にもオフラインとオンラインがありますよね?これをマトリックスのように4象限に置いたときに、店舗っていうのは購入もエンゲージメントもオフラインです。こんなとこ普通やらないですよね。なぜなら、なんの顧客データも取れないから。ここが今の小売りの9割の主戦場なんですね。だけどアマゾンっていうのは、最初からオンライン・オンラインですよね。ネットでやってAIでとにかくアルゴリズムでバリバリやって、何がお客さんが欲しいか知っている。

ここに対してエンゲージメントのオンライン・オフラインを行き来することを僕はチャネルシフトと呼んでいます。アマゾンエコーというのを作ったのはどういう意味かと考えてみると、今まではPCを開いたりスマホを立ち上げて、オンライン・オンラインの状態にならないと買い物できなかったのが、お客さんにあまりオンラインを意識しないで、例えば「おむつ頼みたい」とか発音するだけで済む。こういうオフラインの環境にネットでつながる環境をもってきているという、これがひとつのチャネルシフトです。さらにもう一方でアマゾンブックスをなぜやるのか。ロングテールで基本儲かっているのに、地理的制限がある本屋を何でやっているかというと、アマゾンのひとつのオフラインへの取り込み方の一つなんですよね。つまりまだ9割残っているオフラインな市場を取りに来ているわけです。

そのオフラインの場面でアマゾンブックスは本をロングテールで売りたいとか、何万冊も持つということはしません。本は後でアマゾンのアプリで確認して、ダイナミックプライシングで購入して貰えばいいから、リアルの店舗では良い経験だけをして貰う。チャネルマトリックスの王者と呼んでいるんですけど、アマゾンは今の小売りにおける購買チャネルとしてのオンライン・オフラインと、お客さんとのつながりのオンライン・オフライン全部を持てるということなんで、これがやれる理由はやっぱり、まずはオンライン・オンラインというところを確立しているからだと思います。しかも、品ぞろえも広いということで、これはまあ脅威だなと。

 

流通のamazonがブランドになる

例えば「インターネットトレンド2017」って調べてもらうと出てきますけども、KPCBっていう老舗のベンチャーキャピタルのアナリストが出している資料では、アメリカにおける電池とおしりふきのメジャーブランドは既にamazonのPBになっているんですよね。そこまで行くと、もうその業界の他社はブランディングとかマーケティングとかができない。電池なんてなんだっていい、おしりふきもなんだっていいと。「amazonってブランドなんですか?」って疑問に思っている人もいると思うんですけれど、僕はもうすごいブランドになっていると思うんです。ID、決済も含めて握ってしまっているので、別にどこで何を買おうがいいとなってくると、それでもお店に行くなら、amazon IDを使えるところ、決済できるところがいいねという風になるし、amazon側からするとさっきの残りのオフラインの9割の小売り市場をとるということができるわけで、両方の意味があるんじゃないかなという気がします。

Mary Meeker’s 2017 Internet Trends Report by Josh Constine on Scribd
(amazonのPBに関する情報は75ページ)

 

 >中編へ続く

■—ゲスト紹介—■
奥谷 孝司 (おくたにたかし)

オイシックスドット大地株式会社執行役員
統合マーケティング部 部長 Chief Omni-Channel Officer
1997年良品計画入社。3年の店舗経験の後、取引先の商社に2年出向し独駐在。
2005年衣服雑貨部の衣料雑貨のカテゴリーマネージャー。
2010年WEB事業部長。「MUJI passport」のプロデュースで14年日本アドバタイザーズ協会Web広告研究会の第2回WebグランプリのWeb人部門でWeb人大賞を受賞。

矢野 孝(やのたかし)

大日本印刷株式会社 情報イノベーション事業部 C&Iセンター ビジネスイノベーション本部 クリエイティブビジネス開発部 部長
1999年DNP入社。入社以来14年、大手流通・メーカーなどへのマーケティング・プロモーション・各種システム企画設計など、クライアント支援業務に従事後、2013年にマーケティングコミュニケーション企画部長に就任。2015年よりビジネスイノベーション本部にて新規事業開発の部長を担当し、現在、各種流通と実証実験を行いながら、新たな生活者接点を創出する店頭のデジタル化(Internet of Retail)などを推進している。

磯部 泰之(いそべやすゆき)

株式会社クレディセゾン ネット事業部部長
1992年クレディセゾン入社。営業企画やDBマーケティング推進業務に従事後、銀行・百貨店・コンビニ等との合弁会社へ出向。その後経営企画部、広告宣伝部を経て、2011年よりネット事業部にてデータビジネス事業企画、ネットビジネスでの新規事業開発を担当。2017年3月 ネット事業部長(事業部統括)就任。株式会社セゾン・ベンチャーズ取締役を兼任。

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